フットサルのチームに入ると、最初にぶつかるのが「言葉の壁」です。「パラレラ走って」「そこはケブラ」「ヘドンド回そう」と次々に飛んでくるスペイン語。プレーの実力以前に、何を指示されているのかがわからない。これはサッカーをやってきた人も、フットサルから始めた人も、初心者も同じです。この記事は、そんな「戦術用語に戸惑う人」のための用語辞典です。
攻撃・旋回・個人の動き・守備・セットプレーの5つに分けて、それぞれの用語を「語源/意味/使う局面/サッカーで言うと?」の形でまとめました。上から読んでも、気になる言葉だけ目次から飛んでも使えます。「サッカーで言うと?」はサッカー経験がある人向けの補足なので、未経験でも意味・使う局面だけ追えば大丈夫です。ブックマークして、練習で言われた言葉をその場で引く辞書として使ってください。
「パラレラ」って言われて、走ればいいのか止まればいいのかわからず固まったの、自分です。意味さえ知っていれば防げた立ち尽くしでした。
フットサル戦術用語の全体像|まず「攻撃/守備/動きの種類」で分ける
用語を一語ずつ丸暗記しようとすると、似た響きのスペイン語が頭の中で渋滞します。先に「どのジャンルの言葉か」を分けておくと、新しい用語が出てきても置き場所がわかって整理しやすくなります。
大きく分けると、フットサルの戦術用語は次の5グループに収まります。
- 攻撃の連携プレー(味方と崩す動き):パラレラ、ジャグナウ、アラコルタ など
- チームの旋回・ローテーション(全員で動かす):ヘドンド、エイト、クワトロ など
- 相手を外す・受ける個人の動き:ケブラ、コルティーナ、フィンタ など
- 守備(奪う・止める・コースを切る):マンツーマン、ゾーン、縦切り など
- セットプレー・再開:チョンドン、キックインの約束事 など
この記事もこの順番で並べています。まずは「攻撃か、守備か、個人の動きか」だけ意識すれば十分です。
スペイン語由来の用語が多いのは、フットサル発祥・強豪国のスペインやブラジル(ポルトガル語混じり)の戦術がそのまま輸入されてきたからです。日本語に訳しきらず原語で定着した言葉が多いので、「語源(元の意味)」を一緒に覚えると腹落ちが早くなります。たとえばパラレラは「平行」、ケブラは「折れる」。元の意味がそのまま動きを表しているケースがほとんどです。
【攻撃の連携プレー用語】味方と崩すための動き
まずは攻撃。フットサルのコートは狭いので、サッカーのように一人で持ち運ぶ場面は多くありません。味方の動きに合わせて2〜3人で崩す「連携の合言葉」が、ここで紹介する用語です。
パラレラ(parallela=平行)
- 意味:ボールホルダーが縦パスを出せる位置にいるとき、味方がサイドライン沿いを平行に走り抜けて受ける動きです。
- 使う局面:自陣から運び出すとき、相手のプレスを背後に外したいとき。サイドのスペースが空いた瞬間に走ります。
- サッカーで言うと?:サイドバックの背後を取るウイングの裏抜けに近い動きです。


ジャグナウ/ダイアゴナル(対角の動き)
- 意味:パラレラが縦(平行)なのに対し、ジャグナウは斜めに走って受ける動きです。中から外、外から中へ対角線で抜けます。
- 使う局面:縦が消されているとき、マークを引き連れてスペースを作りたいとき。パラレラとセットで使い分けます。
- サッカーで言うと?:サッカーでも同じく「ダイアゴナル(対角の動き)」と呼びます。ハーフスペースへ斜めに走り込むランそのものです。


アラコルタ(ala corta=短いサイド)
- 意味:サイド(アラ)の選手が遠くへ開かず、近い距離で短くサポートに入る連携です。
- 使う局面:相手のプレスがきつく、長いパスが通らないとき。短い距離でつないでプレスを外します。
- サッカーで言うと?:近距離でのワンタッチのサポート、落としのプレーに近い発想です。


セグンドパウ(segundo palo=ファーサイドの柱)
- 意味:ファーサイド(遠い側のポスト)へ詰める動きです。「ファー詰め」とも呼ばれます。
- 使う局面:サイドからの折り返し・キックインのとき。ニアに気を取られた相手の逆を突きます。
- サッカーで言うと?:クロスに対するファーポストへの飛び込みそのものです。


ワンツー・三角形(パスワーク)
- 意味:2人のワンツー、3人で三角形を作って角度を確保するパスワークの基本です。
- 使う局面:狭いエリアでパスコースを2つ以上持ちたいとき。常に意識しておく土台の考え方です。
- サッカーで言うと?:ワンツー(壁パス)も三角形も、サッカーとまったく同じ呼び方・同じ考え方です。




【チームの旋回・ローテーション用語】全員で動かす戦術
フットサルらしさが最も出るのがこのグループです。一人が抜けたスペースを次の人が埋め続け、ポジションをぐるぐる入れ替えながら相手の的を絞らせない。「旋回(ローテーション)」と総称されます。
ヘドンド(rodando系=回す/4人旋回)
- 意味:フィールド4人が円を描くように同じ方向へ回り続ける旋回です。空いた場所を次々に埋めます。
- 使う局面:相手がマンツーマンで来たとき。マークを引き連れて動かし、ズレを作ります。
- サッカーで言うと?:全員が連動するポジションチェンジの集団版です。


エイト(8の字旋回)
- 意味:選手の動線が「8の字」を描くように交差しながら回る旋回です。
- 使う局面:ヘドンドの応用。中央で交差させてマークの受け渡しを混乱させたいとき。
- サッカーで言うと?:中盤の2枚が縦に入れ替わり続けるイメージに近いです。


クワトロ/4-0(後方から崩す)
- 意味:ピヴォ(最前線)を置かず、4人全員が後ろから飛び出して崩すシステム・考え方です。
- 使う局面:相手をコートの低い位置まで引き出してから、背後のスペースへ飛び出したいとき。
- サッカーで言うと?:偽9番のように、固定の的を作らず流動的に崩す発想です。




旋回(ローテーション)の基本
- 意味:上記ヘドンド・エイトをまとめた「ポジションを入れ替え続ける」という考え方の総称です。
- 使う局面:チームでボールを保持して崩したいとき全般。個々の動きの土台になります。
- サッカーで言うと?:流動的なポジショナルプレーの集団行動版です。


旋回は頭でわかっても、走り出すタイミングが半歩でもズレると全部詰まるんですよね。最初は「自分が空けたスペースに誰が入るか」だけ見てました。
【相手を外す・受ける用語】個人戦術寄りの動き
ここからは、チーム全体ではなく一人の駆け引きに寄った用語です。マークを外して受ける、味方のために壁になる、といった「個人戦術」の合言葉が並びます。
ケブラ(quebra=折れる)
- 意味:一度ある方向へ動いて相手を連れ出し、急に進路を「折って」逆を取る動きです。
- 使う局面:マンツーマンでぴったり付かれているとき。縦に見せて中へ折れる、などで一瞬剥がします。
- サッカーで言うと?:縦に見せて内に切り返すチェックの動き出しに近いです。


コルティーナ(cortina=カーテン/スクリーン)
- 意味:味方の進路を空けるために、自分の体を壁にして相手のマークを足止めする動きです。
- 使う局面:味方をフリーにしたいとき。バスケのスクリーンのイメージで使います。
- サッカーで言うと?:味方のためにディフェンスの前に入って進路を作るブロックの動きです。


エントレリネアス(entre líneas=ライン間)
- 意味:相手の守備ラインとラインの「間」で受けるポジショニングです。
- 使う局面:相手が引いて守っているとき。誰のマークでもない隙間に立って前を向きます。
- サッカーで言うと?:サッカーでも「ライン間(で受ける)」と同じ言葉・同じ意味で使います。トップ下やインサイドハーフの立ち位置です。


フィンタ(finta=フェイント)
- 意味:シュート・パス・ドリブルの予備動作で相手の重心を外すフェイクの総称です。
- 使う局面:1対1で抜きたいとき、シュートコースを作りたいとき。
- サッカーで言うと?:サッカーのフェイント・ボディフェイクと同じです(「フィンタ」はその語源)。


ピヴォ当て/ピヴォの動き
- 意味:最前線のピヴォ(ポストプレーヤー)に当てて起点を作るプレー、およびピヴォ自身の受け方です。
- 使う局面:手詰まりのときの逃げ道・起点づくりとして。当ててからの落とし、反転で攻めます。
- サッカーで言うと?:ターゲットのセンターフォワードへの楔のパスとポストプレーです。




【守備の用語】奪う・止める・コースを切る
攻撃用語ほど派手ではありませんが、チームで共有しておかないと崩壊するのが守備の言葉です。「どう奪うか」より先に「どう守るかの約束事」を表す用語が中心になります。
マンツーマン/ゾーン
- 意味:人につく守備がマンツーマン、エリアを分担して守るのがゾーンです。
- 使う局面:マンツーマンは前から奪いに行きたいとき、ゾーンは中央を固く守りたいときに使い分けます。
- サッカーで言うと?:マンツーマン(マンマーク)もゾーンも、サッカーと同じ呼び方・同じ考え方です。


縦切り・中切り(ポジショニング)
- 意味:寄せる角度で相手の縦のコースを消すのが縦切り、中(中央)へのコースを消すのが中切りです。
- 使う局面:相手を外へ追い出したいときは縦切り、中央侵入を防ぎたいときは中切りを使います。
- サッカーで言うと?:サッカーでも同じく「コースを切る(縦切り・中切り)」と呼ぶ、パスコースを限定する寄せ方です。


数的不利(1vs2・1vs3・2vs3)
- 意味:守備側が攻撃側より少ない人数で対応する状況です。フットサルでは頻繁に起きます。
- 使う局面:カウンターを受けたとき。遅らせて味方の戻りを待つ「我慢」が基本です。
- サッカーで言うと?:サッカーでも「数的不利」と同じ言葉で呼びます。ショートカウンター対応の遅延と同じ原則です。


インターセプト/我慢の守備
- 意味:パスを読んで奪うのがインターセプト、無理に飛び込まず遅らせるのが我慢の守備です。
- 使う局面:読みが効くときはインターセプト、状況が整わないときは我慢して時間を作ります。
- サッカーで言うと?:インターセプトはサッカーでも同じ言葉です。パスカットと、ディレイ(遅らせ)の使い分けと考え方は同じです。


ファー詰め対応・セットプレー守備
- 意味:相手のファー詰め(セグンドパウ)への対応や、キックインなど止まった局面の守り方です。
- 使う局面:相手ボールのキックイン・コーナー時。マークの確認とニア・ファーの分担が要です。
- サッカーで言うと?:セットプレー時のマーク確認とゾーン配置に近い段取りです。




【セットプレー・再開の用語】キックインなど
フットサルはプレーが止まる回数が多く、再開の質がそのまま得点・失点に直結します。短い言葉で約束事を共有できるよう、セットプレーにも専用の用語があります。
チョンドン(ちょん+ドン=置いて蹴る)
- 意味:キックインで一度味方に「ちょん」と触らせ、戻したボールを「ドン」と蹴り込むセットプレーです。
- 使う局面:相手ゴール近くのキックイン。直接蹴れないルールを使った得点パターンです。
- サッカーで言うと?:間接FKでの「触ってからシュート」のお決まりパターンに近いです。


セットプレー全般
- 意味:キックイン・コーナー・フリーキックなど、止まった状態からの再開プレーの総称です。
- 使う局面:攻守どちらも、事前に約束事(誰がどこへ動くか)を決めておく場面です。
- サッカーで言うと?:「セットプレー」はサッカーと同じ言葉・同じ位置づけです(サインプレーを仕込む点も同じ)。


もっと深く知りたい人へ|フォーメーション・ポジションの用語
ここまでの用語が「動き」の言葉だとすれば、その動きが乗る土台が「フォーメーション」と「ポジション」です。用語の意味がつかめてきたら、次はこの2つを押さえると戦術全体が立体的に見えてきます。
- フォーメーション:ダイヤモンド・ボックス・クラウン・L(エル)・クワトロ&ゼロの5型が基本です。入口としてフットサルのフォーメーション完全ガイドから、ダイヤモンド・ボックス・クラウン・L(エル)・クワトロ&ゼロへ。
- ポジション:ゴレイロ・フィクソ・アラ・ピヴォの4つ。役割はフットサルのポジション解説、最後尾のフィクソの役割から押さえると流れが見えます。
- 戦術の全体像(概論):チーム戦術/オフェンスの考え方/ディフェンスの考え方。
まとめ|用語は「使う局面」とセットで覚える
フットサルの戦術用語は数が多く、最初は呪文のように聞こえます。ですが、この記事のように「攻撃/旋回/個人/守備/セットプレー」の5つに分け、それぞれを「いつ使うか」とセットで覚えれば、現場で言われた瞬間に動き出せるようになります。
- 攻撃の連携:パラレラ(平行)、ジャグナウ(対角)、アラコルタ、セグンドパウ
- 旋回:ヘドンド、エイト、クワトロ
- 個人の動き:ケブラ、コルティーナ、エントレリネアス、フィンタ
- 守備:マンツーマン/ゾーン、縦切り・中切り、数的不利、我慢の守備
- セットプレー:チョンドン
言葉の意味がわかると、チームメイトの指示が「やるべき動き」に翻訳できて、プレーの判断が一気に速くなります。このページをブックマークして、練習で出てきた用語をその場で引く辞書として使ってみてください。
用語って、解説を読んだ瞬間より、個サルで実際に「あ、今のがパラレラか」と体で当てはまった瞬間に一気に腹落ちします。覚えたら次の1本で1回試すのがおすすめです。
戦術をもっと体系立てて学びたくなったら、解説書を一冊そばに置いておくと用語の整理が早まります。フットサル戦術が学べる本のおすすめもあわせてどうぞ。


